The酒場2009 3/1 File No.5「伊那グラムハウス」
「え?あんなの、すきですか。」「まずいですよ。」
「まあ、人生経験ですな。」
地域に行けば地域の数だけご当地名物があるが、ここ伊那にも知る人ぞ知る名物がある。
それが「ローメン」だ。
富士宮なら「富士宮焼きそば」、富士吉田なら「吉田のうどん」。みな地域おこしに一役買い、もちろん地元の人は言う。
「最高にうまいですよ。」
「ぜひ一度。ごちそうします!」
「これ食わなきゃ一生後悔しますぜ。」
ここ伊那の人は違う。地元の人は言う。
「え?こんなのすきですか。」
「まずいよ。」
「臭いよ。」
「まあ、人生経験しておいで。マダム。」
ローメン食いに居酒屋行くとしますか。
・・・・・・・・・・・・・・・
伊那は、人口に対しての居酒屋数が日本一の地域であるという。あたしは鼻を膨らませ、大きく息を吸い、臭いを嗅ぐ。
今夜はここに決めた。少し緊張してのれんを潜る。
「いらっしゃいませ~。」
・・・・いい女のいい声だ。
お、宴会やってるな。年のころは、50、60代だろうか。男もいる、女もいる。10にんくらいかな、にぎやかだ。カウンターには幾つものピカピカのトロフィーが。なんだろう。ゲートボール大会?
「マレットゴルフですよ。マレットゴ・ル・フ。」
・・・いい女があたしに耳打ちする。
「うるさくてごめんなさいね。」
・・・「いえいえ、芋焼酎のお湯割りください。今夜は寒いですねえ。」
あたしは、飲む。
飲む。
飲む。
ローメンはまだいいかな。
「それでは、今日誕生日をむかえた○○さんから一言いただきましょう~。」
・・・割れんばかりの拍手。
・・あたしも拍手。
小柄な婦人が立ち上がる。
「・・・・・。・・。・・・・、・、・・・・・・・。
・・・ほんとに日本はいい時代になりまして、あたくしたち女は、男の方とこうやって肩並べてお酒を飲めるようになりました。あたくしは、1945年生まれでございますけど、こんな時代がくるなんて、夢にも思いませんでした。ほ~んとによかった、いい時代ですわ。・・・。」
・・と、ここであたしは、感極まりスタンディングオベイション。
「いぇ~い、飲みましょう~!」
・・・みんな、こっちを見た。
みんなで、
乾杯。
午後8時。
宴会は終了。ぱあっ~と桜が散るように終了。
近所の2~3人の男たちは、宴の続きとカラオケへ。明日は仕事が早いから、と帰る男、孫が来てるから、と帰る男、夕飯待ってるから、と急ぐ女。
それぞれの家路へと、それぞれの明日へと。
しばしの宴。
本気で楽しんでいった男たち女たち。
あたしもそろそろ行かなくちゃ。
ライブが待っている。
「あ、ローメンくださいっ。」
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午前2時。
本気で楽しんだ伊那の男たち女たち、そして本気で笑ったあたし。
打ち上げもお開きだね。
ローメンですか。
まあ、そんなことはどうでもいいのです。
それより、午前2時の月はきれいでしたよ。
見渡せば、四方は山でね、
ここは長野県ですか。
気がつかなかったなあ。
そんなことより、
今日は、楽しかった。ありがとう、伊那。
・・・今夜もまた、明日もまた。
by madam-guitar | 2009-04-13 02:22